アンテナ修理を頼む前に

テレビが映らなくなったとき、テレビ自体が壊れたと思う人もいるでしょう。しかし、アンテナで受信しているテレビであれば、それが原因のこともあります。実際、自然災害などでアンテナが破損して修理が必要になるケースは多いです。この記事ではアンテナやその周辺の破損や修理に焦点を当てて解説していきます。

1.修理が必要なアンテナの部品

アンテナが壊れてしまったときは、アンテナ本体だけではなく、ブースターや分配器が原因であるケースも考えられます。ここでは、修理が必要になるアンテナの部品について説明していきます。

(1)テレビアンテナ本体
テレビアンテナ本体は通常屋外に設置されるもので、地上波デジタル放送や衛星放送を受信するためにあります。ケーブルテレビを導入していないところでは、アンテナが屋根の上や外壁などに取り付けられているのが普通です。屋外にある理由は電波を受信しやすくするためですが、その分毎日風雨にさらされるという状況がともないます。そのため、アンテナ本体はテレビの視聴を構成する部品の中でもっとも壊れやすい部分であり、台風や地震などの自然災害にも影響を受けるという特徴もあるのです。テレビが急に映らなくなったり映像や音声が乱れたりした場合で、テレビ自体に問題がないようであれば、まずはアンテナの本体に異常がないかを調べることが重要です。

テレビアンテナには大きく分けると2種類あります。ひとつ目が「地デジアンテナ」で、形は魚の骨のようなものです。昔から戸建ての屋根の上などでよく見られたものがこの形のアンテナで、「八木式アンテナ」と呼ばれることもあります。サイズはおおよそ50センチ×30センチ×100センチくらいで、割と大きめなので屋根に取り付けると存在感があるでしょう。ちなみに、同じ地デジアンテナでも、中継局の偏波面によって購入するものを変えなければならないことに留意します。偏波には水平偏波と垂直偏波の2種類あるので、アンテナもそれに応じて水平偏波アンテナと垂直偏波アンテナの2種類に分かれます。間違えた種類のものを購入しないよう気をつけなければなりません。

地デジアンテナを取り付ける場合、設置場所や角度などは、どこにテレビ塔などの電波の発信源があるかが重要となります。最適なのは電波の発信源にアンテナを向けることです。きちんと設置してもテレビの映りが悪いときは、電波の発信元からの距離が遠いという原因が挙げられるでしょう。その場合、受信感度が高いアンテナに買い替えるか、ブースターや混合器を別途設置して受信感度を上げる対策が有効です。また、地デジアンテナは多少アンテナの角度が変わったとしても、テレビ視聴に大きな影響は与えないことが多いです。強風などで大きく角度が変わってしまったらその限りではありませんが、日常生活の中でアンテナの角度を調整する機会はそれほどたくさんはないでしょう。

また、地デジアンテナは、たとえ輻射器以外のアンテナのエレメントが1本折れたとしても、まったく映像が映らなくなるというケースは多くありません。しかし、いずれにせよアンテナにトラブルがあった場合は修理や交換をしなければならず、屋根に上ることになります。簡単な角度調節くらいは自分たちでできるかもしれませんが、設置場所の性質から高所作業となるので、業者に依頼したほうが無難です。

地デジアンテナは通常魚の骨のようなデザインと述べましたが、そのような形は家の外観を損ねるという考え方もあり、現在ではスタイリッシュな形をした「デザインアンテナ」を導入する家も増加傾向にあります。デザインアンテナは多くの場合長方形をしており、一見するとアンテナのようには見えない姿をしています。サイズはメーカーなどによってさまざまですが、だいたい縦幅が50センチくらいです。こちらは外壁に取り付けることが多いです。

もうひとつのアンテナの種類は「BS・CSアンテナ」で、こちらは衛星放送を見る場合に必要なものとなっています。「パラボラアンテナ」と呼ばれることもあり、形は真ん中がへこんだおわん状の形をしていて、地デジアンテナとは見た目が大きく異なります。このような形をしている理由は、反射鏡を用いて効率的に電波を集めるためです。反射鏡の正面下側にはコンバータと呼ばれる、電波を変換する機器がついています。コンバータについている放射器から集められた電波は、ここで周波数の変換処理がされているのです。地デジアンテナとBS・CSアンテナで形状が違う理由は、衛星放送の電波と地デジの電波の経路が違うためで、それぞれの電波に最適な受信方法も異なるからです。地上波デジタルでは送信所やテレビ塔から各アンテナに電波を飛ばしますが、衛星放送では人工衛星から電波が送信されます。

ところで、BS・CSアンテナとひとまとめにしましたが、実際はそれぞれにアンテナが必要な場合があります。今では共通のアンテナもあるので、ひとつのもので両方を受信できるようになりました。しかし、以前はBS・CSの2つを視聴したければ、皿状のアンテナを2つ設置する必要がありました。こちらのアンテナは取り付ける建物の条件などにも左右されますが、サイズは直径45~100センチ程度になります。マンションの場合は主にベランダに、戸建ての場合はベランダや外壁などに取り付けることが可能です。

BS・CSアンテナを取り付ける際は、角度や方向をシビアにしなければなりません。どこに住んでいるのかによっても方位角や仰角は変わり、たとえば札幌では方位角221.7で仰角31.2が目安なのに対し、那覇では方位角215.9で仰角53.6が目安になります。地デジアンテナとは違い、風などで角度が変わってしまったらテレビの映りが悪くなる可能性があります。BS・CSアンテナで故障しやすい部分は、コンバータです。テレビの映りが悪くなったと感じたら、まずはコンバータに異常がないかを確認しましょう。


(2)ブースター
アンテナの中には、アンテナブースターと呼ばれるものが取り付けられています。これは、地上波や衛星波を増幅する装置であり、微弱な電波でも強度を高める働きをします。アンテナにはどうしても、ケーブル損失や分配損失といった電波の損失がついて回ります。それをできるだけ補い電波強度を上げるのが、ブースターの主な役割です。ブースターは屋内に設置されることもあるので、自然条件によって壊れたり働きが弱まったりということはアンテナ本体に比べると少ないでしょう。ブースターには本体と電源部があり、本体のサイズは家庭用のものでだいたい10~20センチ四方に収まる程です。電源部はほとんどの場合屋内に設置されて、風雨に当たらないように保護されています。ブースター本体の設置場所はなるべくアンテナに近いところにすることが、効果的に使用するためのポイントです。

ブースターにはたくさんの種類があるので注意が必要です。地デジ専用やBS・CS専用といった個別のタイプに特化したものもあれば、1台で地デジとBS・CSの両方に使用できる混合器内蔵型タイプもあります。また、4Kや8Kに対応したブースターもあるので、ブースターを取り付けたいテレビの種類によって購入するタイプを変えることが重要です。使用する際に注意しておきたいことは、いくらブースターを使ったとしても、アンテナが出力した以上の信号品質にはならないという点です。ブースターは信号を増幅しますが、同時にノイズも増幅してしまうため、映像や音声の品質が向上するわけではないことに留意しましょう。映像の品質を上げたいのなら、まずはアンテナ本体の買い替えを検討したり、角度や方向を改善したりすることが重要です。

アンテナ本体に異常がある場合は映像が乱れながらも映ることが多いですが、ブースターが壊れると映像がほとんど映らないのが一般的です。また、そのため、この特徴を踏まえたうえでよく観察すれば、どこに故障の原因があるのかを突き止めやすくなります。また、使用時にブースターが異常振動して映像が乱れることもありますが、これはケーブルの設置方法に問題がある可能性を指摘できます。ケーブルを質の良いものに替えたり、ケーブル同士の距離をある程度離したりして、電波が混ざらないように工夫する必要があります。

このような症状を示す場合は必ずしも壊れたわけではなく、適切な処置をしてあげれば改善する可能性は高いです。さらに、ブースターの調整が不適切な場合でも、最適な映像を得ることができません。こちらもブースター自体が壊れているわけではなく、調整を行えば良質の映像を手に入れられる確率が高まります。信号の強度は高ければ良いというわけではなく、逆に低くても良いというものでもないので、適切に調節することが大切です。

ブースターには電源部がついていることから、本体が故障していなくても電源部が壊れたら正常に機能できなくなります。また、とりわけ夏場に異常発熱を起こすこともあるので、排熱や設置条件などに注意が必要です。新しい世代のブースターはコンパクトになる傾向にあり、より熱をため込みやすい構造になっています。ブースターの特徴をよく理解した上で、設置や管理を行うことが求められます。夏場はブースターが収められている箱の扉を開けるなど、工夫してみましょう。熱を伴う電化製品は、10度動作温度が上がると寿命が半分になるといわれることがあります。このことを頭に入れておけば、ブースターを買い替える頻度が減る可能性があるでしょう。

(3)分配器
分配器とは、複数台のテレビに電波を分けることができるもので、これさえあれば自宅にいくつものテレビが設置可能となります。分配器そのものはそれほど大きくはなく、ものによっては数センチ程度しかありません。分配器にはひとつの入力端子(テレビ端子など)につなげて複数の同レベルの出力を行う能力があります。分配数によって「2分配器」「3分配器」「4分配器」がありますが、分配器で気をつけておきたいのは、分配数が多くなるほど分配損失も大きくなるということです。むやみに分配器を使って出力を分けることは、なるべく避けたほうが良いといえます。分配する数によっては、ブースターが必要になる場合もあります。ブースターは単にアンテナの感度が弱いなどのケースだけではなく、こうした場合でも必要になることがあるのです。

ところで、分配器と似た名前のものに、分岐器というものもあるので押さえておきましょう。こちらは入力信号の一部分を分岐することが目的です。分岐された先の出力レベルは出力端子からダイレクトに出力されるものと比べて、低いレベルとなることに注意が必要です。また、分波器というものもありますが、これは地デジ波と衛星波が混ざったものをそれぞれに分けるという機能を持っています。分配器と分岐器、分波器は機能的にまったく別物なので、混同しないようにそれぞれの特徴を理解しておくことが重要です。

分配器が壊れると、家の中でひとつのテレビだけが映らないという症状が出ることがあります。そのため、分配器の故障は原因を突き止めやすいともいえるでしょう。分配器の故障の原因にはサビなどが挙げられます。また、分配器自体が故障すれば、つなげたテレビのすべてが映らないという事態も起こります。戸建ての場合には分配器は天井裏などに設置されていることが多く、業者に任せないと交換しにくいケースが多いので注意が必要です。分配器が壊れたと思っても実際は配線不良だったということもあるので、いずれの場合も分配器やその周辺の故障およびトラブルが疑われた場合には、専門業者に連絡すると良いでしょう。

分配器には2種類あり、「一端子電流通過型」と「全端子電流通過型」に分かれます。一端子電流通過型はその名の通り、電流を1端子にのみ送っています。そのため、複数台のテレビをつなげたとしても、電流が通過しているテレビの電源を落とすと、必然的に他方のテレビで放送が受信できなくなるので注意が必要です。一端子電流通過型は、基本的に複数台でテレビを見ない人向けの分配器となっています。複数台のテレビを家に設置したい人は、全端子電流通過型が良いでしょう。分配器につなげた機器すべてに電流が流れるため、どのテレビの電源を落としても、ほかのテレビの受信に影響はありません。

2.火災保険に入っていますか?

火災保険は火災に関しての保険適用だけではなく、幅広い自然災害に対しても適用されます。火災保険に加入していれば、アンテナが損傷した場合でも保険金がおりることがあるのです。


(1)火災保険がアンテナ修理に適用できる訳
火災保険は文字通り、火災の被害にあったときに保険金がおりるというものです。しかし、実際には台風や豪雪、大雨、強風などで受けた被害であったとしても、保険が適用される可能性があるのです。とりわけアンテナ本体は住居の屋根に設置されていることが多いため、上記の自然災害で被害を受けやすいといえます。火災保険は住宅や家財の損傷に対して支払われるものであり、住宅の一部であるアンテナが自然災害の被害にあったときも、保険を適用することが可能なのです。ただし、もちろん、適切な補償をつけていた場合のみなので、すべての火災保険でアンテナ修理に対する補償がおりるわけではありません。

たとえば、加入している火災保険の中に「風災補償」や「雪災補償」などが含まれていれば、対応する自然災害に遭った場合にはアンテナの修理費用を低く抑えることが可能となります。ですが、たとえ火災保険にこれらが含まれていたとしても、アンテナ修理には適用されなかったり、全額補償ではなかったりするケースもあるので注意が必要です。とりわけ、「20万円フランチャイズ方式」の火災保険に加入している場合には、アンテナの修理費用がでない可能性が高いでしょう。

20万円フランチャイズ方式とは、被害を受けた額が20万円に満たない場合には保険金が支払われないというものです。これは、アンテナの修理代に対して保険がまったく適用されないというわけではありません。アンテナの修理代が保険適用額である20万円に至らないと、一切保険がおりないというものです。逆にいうと、20万円を超えた分の被害額に関しては限度額以下で保険金が支払われます。さらに、自己負担金額(免責金額)を火災保険加入時に決めるという契約もあり、自己負担金額は3万円や10万円などから比較的自由に選ぶことができます。これから火災保険に入ろうとしていたり、乗り換えを検討していたりする人は、保険の内容についてよく理解しておくことが重要です。

しかし、こういった火災保険に入っていたとしても、被害がアンテナだけではなく屋根全体におよんだという場合には、被害の合計額が20万円を超えるかもしれません。そのため、一概にどの保険がベストだということはできないので、自然災害の多い地域かなども考慮して決めることがポイントです。一般的なアンテナの修理費用は、屋根などの補修を含めなければそれほど多くはならないでしょう。保険に加入する場合は、このことを頭に入れておくと免責金額を決める際に役に立ちます。

さらに知っておきたいことは、火災保険は「建物のみ」「家財のみ」「建物と家財」の大きく3つに対象が分けられるということです。建物に取りつけてあるテレビアンテナは、アンテナの所有者が建物の所有者と同じ場合にのみ「建物」として扱われます。また、家財のみに加入していた場合は、アンテナが被害を受けても補償が一切なされないことに注意しましょう。さらに、たとえきちんと火災保険に加入してアンテナの補償を受けられる立場にあったとしても、申請期限が決められているため、それ以降に申請しても補償は受けられません。

加えて注意しておきたいのは、業者が適切な見積もり額で修理してくれるかどうかということです。テレビアンテナが壊れると生活の楽しみが失われるため、できるだけ早く修理したいと焦る人もいるでしょう。しかし、業者の中にはそういった人の心理を見抜いて、不適切な修理を行うものもいるかもしれません。具体的には、壊れたのはアンテナ本体なのに修理箇所にはブースターや分配器も含まれているというようなケースです。本来は修理や交換が必要ない箇所にも手を入れようとしていないか、きちんと見積書を見ておく必要があります。

また、アンテナとともに屋根の一部やアンテナを支えていた外壁などが破損した場合、アンテナを修理・交換する業者に同時に頼むのはやめたほうが無難です。さまざまな業者がいるため、中にはアンテナの修理と家屋の修理を同時にこなせるところもあるかもしれません。しかし、アンテナの修理を専門に請け負う業者で、屋根や外壁の修理も専門的に行っている可能性は低いでしょう。面倒だからとアンテナ修理の業者に家屋の修理を依頼しても、優れた仕事をしてくれない恐れがあります。それに対して料金を払うのはもったいないことなので、アンテナはアンテナ修理業者に、家屋は家屋の修理業者に依頼することが大切です。

ところで、地震の被害は地震保険ではないと基本的には適用されないため、地震によってアンテナが被害を受けたケースでも、火災保険はおりません。地震保険は津波や噴火による被害に対しても補償されます。ただ、地震保険は基本的に単体でかけられるものではなく、火災保険の特約で申し込んだり、自動的に付帯していたりするものです。そのため、火災保険に加入する用意があるのなら地震保険についても考えておくと、いざというときに安心できるでしょう。

保険は万が一のときに生活を立て直すのに大変役立つものです。テレビアンテナは外に設置してあることが多いため、自然災害の被害を受けやすいものといえます。損傷を受けたときには直すのに何万円もかかってしまうことがあるので、保険を上手に活用することが重要です。火災保険にすでに加入している家庭も多いでしょうが、今の保険は適切なのか見直すことも大切です。気候変動などの影響で自然災害や異常気象が世界的に問題となっている今日、少しでも被害を受けたときの負担を減らすために、適切な火災保険に加入しておきましょう。

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